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第27話 デートくらいなら

last update Last Updated: 2025-06-05 11:05:46

 かなりカレンは不機嫌です。まったく話は聞いてくれないし、響子理央姉妹はなぜかキャーキャー言ってるし、伊織に至っては「帰る!!」って歩いて行こうとするし。結構なパニック状態に陥った。

 時間が経つにつれて、落ち着いてきた皆に事情を説明する。

「で?あたしがその康介とデートしなきゃなの?」

「うん、まぁ、そういう事なんだけど」

 返事に困った。

「どうやって? 康介君てあの工藤康介くんでしょ? 一昨年亡くなった」

「うん。そうみたい。私は公立高校だったから近いし時々見かけてはいたんだけど、あまり話したことはないかなぁ」

 と理央が言う。あ、そういえばこの、カレン・響子・理央は幼馴染だから[康介]の事は知ってるんだな。話が早くて助かる。

「どうやってするのよ?」

「え?」

 意外なセリフが返ってきたことに驚いた。今まで会ってきた時のカレンの性格からすれば答えは「NO」だと思っていたから。

「するにしても今の康介って幽霊なんでしょ?」

「そうなんだよなぁ……で、考えたんだけど、あれ使えないかな?」

「「「あれ?」」」

――あれ? この反応はなんだろう?

 三人の思いも寄よらぬ反応に少し焦る。同時に思った。それは、時々当たり前のように俺の前に現れるあれの事なんだけど、この反応は思ってもいなかったんだ。

「あのね、シンジ君。あれはみんなには言ってないの。それに、意識ある状態で使うと結構体にひびくんだよねぇ」

「む……」

 この点に対しては反省した。確かに俺も人前ではこの体質を好き好んで口外したりは絶対にしない。信じてもらえるか否かの以前に、そんなこと言う人がどういう目で見られるのかを身をもって経験しているから。人は些細なことでも結構簡単に離れていってしまうものだ。実体験があるからすごく良く分かる。

「使えないとすれば……どうするか」

「考えてないんでしょ?」

「はい……
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